リチウムバッテリーの膨張とは

🔋 リチウムバッテリーが膨張する理由(基本)

リチウムバッテリーが膨張するのは、内部でガスが発生するからです。その原因は主に以下のようなことが挙げられます:

  1. 過充電や過放電
  2. 高温(熱暴走)
  3. 劣化(サイクル劣化や経年劣化)
  4. 内部短絡(ショート)
  5. 物理的なダメージ(落下や衝撃)

これらがきっかけとなり、バッテリー内部で化学反応が異常に進行し、本来出るべきでない副生成物(ガスなど)が生じます。


🧪 中で何が起きているのか?(化学的視点)

リチウムイオン電池の基本構造は:

  • 正極(例:リチウムコバルト酸化物など)
  • 負極(例:グラファイトなど)
  • 電解液(有機溶媒+リチウム塩)
  • セパレーター(絶縁体)

これらが層になって巻かれています(「巻き寿司構造」ってよく言われます)。

◉ 異常時に起きる反応例:

  1. 電解液の分解反応
     → 有機溶媒(例:エチレンカーボネート)が熱や電圧ストレスで分解
     → エチレンガス、二酸化炭素、メタンなどのガスが発生
  2. SEI膜の破壊と再形成
     → SEI(固体電解質界面)膜が壊れると、新しく再形成されるときに反応が進行
     → この過程でもガス発生
  3. 負極材料の不安定化
     → 過放電や内部短絡で負極がリチウムメッキ化(リチウム金属が析出)
     → 電解液との反応が激しくなり、ガス発生と発熱

🔥 膨張 → 発火・爆発のリスク

膨張するだけではすぐには発火しませんが、バッテリーがパンパンに膨れてくると

  • セパレーターが破れる
  • 正極と負極が直接触れる
  • 内部短絡 → 発熱 → 発火 → 爆発

最悪のシナリオです。


👀 見た目の兆候(これが見えたらアウト)

  • バッテリーがふくらんでケースが開きそう
  • デバイスの背面カバーが浮いてきた
  • 異臭(甘いような、金属が焼けたようなにおい)

→ すぐに使用を中止して、安全な場所に隔離、回収処理を!


🧯 安全対策と予防方法

  1. 過充電を避ける(ちゃんとした充電器を使う)
  2. 高温の場所で放置しない(炎天下の車内など)
  3. 物理的に衝撃を与えない
  4. 膨張が始まったら絶対に穴を開けたりしない
  5. 使用期限が近い古いバッテリーは早めに交換

もし膨張したリチウム電池を持っていたり、対処に不安がある場合は、自治体の「有害ごみ」や「電池回収」などの制度を使うのが一番安全です。